『黄帝内経』とは?内容をわかりやすくザックリ説明します!~①正しいイメージを持とう~

黄帝内経(こうていだいけい)とは、中国医学の古典です。

古い中国語で書かれた非常に難解な本で、未だに研究が進められています。量も全18巻で大変多いです。

内容を本気で学ぼうとすると分厚い本になってしまいます。それは本で勉強して頂くとして、ここでは『黄帝内経』に興味を持って下さった方に向けて、ざっくりとご紹介します。

前提知識をざっくりと

『黄帝内経』の立ち位置を知ろう

前漢末(=0年くらい。今から約2000年前)の時代、中国には次のような『医学書』がありました。

・『黄帝内経』全18巻 『黄帝外経』全37巻

・『扁鵲内経』全9巻 『扁鵲外経』全12巻(扁鵲は「へんじゃく」と読みます)

・『白氏内経』全38巻 「白氏外経」全36巻

・『旁篇』全25巻

・『右医経七家』全216巻

これらのうち、『現存しているのは『黄帝内経』だけです。ちなみに、「内経」と「外経」の違いも謎です。

とても古い本なのに現存している、レアな医学書なんですね。

 

後述しますが、『黄帝内経』は大きく『素問』と『霊柩』に分かれています。

 

我々が想像する「本」とは違う

この本が書かれたのは大体2000年前で、とても古い物です。しかも1人の著者が書いたのではなく、色々な著者によって、約400年もかけて作られていきます。(期間は諸説あり)

当時パソコンはもちろん紙も無いので、「墨をインクにして竹に書く」とか、そういうレベルで書物が受け継がれていきます。その竹が割れたら、別の人が他の竹に書き写したり…。

また、途中で色々な考えを持った人が編集に携わるため、先人の考えを否定することもあります。

ですから紛失、写し間違い、意図的な書き換え、もう何でもありです。とても胡散臭い。(笑)

とてもアヤシイ本なんだけど、現代でも実際役に立つ。そんなスゴイ本と思って頂ければ大丈夫です。

 

黄帝と臣下の対話形式で書かれた、論文集

『黄帝内経』は、論文を寄せ集めた本です。

論文と言えば現代では「科学的な実験内容」を書いていくものですが、当時そんな形式はありません。

各々の研究者が気付いたことを「こうなんじゃね?」と書いていくだけです。笑

内容の形式は主に「問答」です。

黄帝というエライ人(架空の存在)が、医療に詳しい人物に質問している。そんなシチュエーションで話が進みます。

質問を受けている人々が、本の著者です。「偉い人から質問を受けて、私が答える」という形式で書くんですね。

主な人物は
・岐伯
・少師
・少
・伯高
・雷高

の5人です。
(実際には5人で製作したものではなく、その5人を師とする5グループそれぞれが、長い年月をかけて書き足していったものとされています)

 

内容が全然まとまってない!!

論文を寄せ集めた本ですから、教科書ではないんです。学びやすくまとまっているわけではありません。

現代と違って科学的手法を用いているわけでもないから、読んだだけでは内容が正しいかどうかも分かりません。

先人の論文に対して反論する論文が載っていることもあります。

 

こんな風に、結論の定まらないワケの分からない内容が、古代中国語で書かれています。何を言っているのかよく分からない部分もあるし、文の解釈が一通りに定まらない部分もたくさん。

そんな書物が、いつしか紙が発明された後で、本の形にまとめられて現代に残っています。

読み解く難しさが分かって頂けると思います。笑

 

『黄帝内経』の構造を知ろう~『素問』と『霊柩』~

 

『素問』(そもん)

『素問』では人体の捉え方や、背景にある思想全般を述べています。基礎理論的な内容です。

・養生の方法

・陰陽論

・臓器

・脈診

・具体的な病気の解説

 

『霊柩』(れいすう)

『霊柩』には、主に針治療(経脈説)について書かれています。実践的・技術的な内容です。

その他にも、経脈についての様々な説、飲食で心掛けること、患者の体質の考察などに触れられています。

色々と別名があるのですが、『九巻』『九霊』『九虚』『針経(しんぎょう)』は全てこの『霊柩』のことです。

 

太素(たいそ)

これは『黄帝内経』とは別の書物なのですが『素問』と『霊柩』に注釈をつけた本です。(2つをまとめた解説書的な本)

 

 

我々はどうやって学んだらいいのか?

Lv.1…現在の中医学、東洋医学に学ぶ。

これが一番分かりやすいです。『黄帝内経』の思想は、現在の中医学や東洋医学に受け継がれています。

中医学や東洋医学は分かりやすい本がたくさんありますから、気軽に学ぶことが出来ます。

Lv.2…『黄帝内経』の解説書を読む。

『黄帝内経』を解説した本があります。内容の解釈について、説が分かれている部分を解説してくれたりしています。

解説書と言っても、基本的にはLv.1の知識がないと読むのがツラいと思います。

Lv.1よりハードルは上がりますが、何事も「原典に当たる」ことは大切です。いずれ本を紹介します。

Lv.3…原典『黄帝内経』の和訳版を読む。

かなりハードです。解説書で前提知識を得ておかないと読み解けないと思います。

Lv.4…古代中国語を勉強し、本当の原典を読む。

医学史を専門にしたい方にオススメしますが、一般的にはここに時間を割く暇はないと思います(笑)

 

次回は『素問』と『霊枢』の内容を超ザックリと解説したいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございました。