ビタミンやサプリメントの天然原料・合成原料の違いについて明確にします。

栄養療法やサプリメントの分野では、よく「天然と合成の何が違うの?」という話が取り上げられます。

一般的には「天然が体に良くて、合成は悪い」と言われることが多いですが、具体的に何が問題なのかは曖昧な方が多いと思います。

今回は、「天然vs合成」の論争について問題点を明確にしながら、基礎から順を追って解説していきます。

 

 

前提知識①:そもそも天然原料、合成原料とは何か?

 

天然原料とは、「野菜、果物、魚介、酵母などから抽出した原料」

簡単に言えば、自然界にあるものから直接抽出したということです。

例えばビタミンAは、タラの肝臓にある油から抽出することが出来ます。

ビタミンAを摂るには、もちろんタラを直接食べる手もありますが、ビタミンAだけを取り出してサプリメントにする方法もあるよ、ということです。

抽出したビタミンAを原料として、それを粒状に固めるための原料などと組み合わせて、「サプリメントという製品」が完成します。

 

合成原料とは、「人工的に、物質の構造を変化させて作りだした原料」

簡単に言えば、天然原料以外の物です。

自然物から直接抽出するのではなく、何らかの物質に化学変化を起こして原料を作る、という方法で入手します。

例えばビタミンAを人工的に合成する際は、「ビニル-β-イオノン」と「β-ホルミルクロチルアセテート」という2物質に、カップリング反応という化学反応を起こすなどして作ります。

詳しい原理はともかくとして、栄養素は、自然物から直接入手しなくても、人工的に作ることも出来るのだと覚えて頂けたらと思います。

 

 

前提知識②:同じ名前の栄養素でも、複数の種類がある。


これは非常に重要なことです。

 

例えば「鉄分」という栄養素には主に「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」の2種類があり、化学的には異なる物質です。体内での鉄分としての働きは同じですが、吸収の仕方などが異なります。

両者の違いは「天然か合成か」ではありません。ヘム鉄は肉や魚に、非ヘム鉄はひじきやホウレン草などに多く含まれていて、どちらも天然の栄養素です。

ですがサプリメントとして鉄分を摂る際には、ヘム鉄を摂ることが推奨されます。

 

また「葉酸」という栄養素には「天然葉酸(ポリグルタミン酸型葉酸)」と「合成葉酸(モノグルタミン酸型葉酸)」の2種類があります。

葉酸の場合は、天然由来と合成由来の場合で物質が違うわけですね。

栄養素としての体内での働きは同じなので、同じ「葉酸」という名前がつけられるのですが、物質としては別物であり、吸収の良さなどが異なります。

 

「天然か、合成か」という分類よりも、「同じ名前の栄養素でも、いくつか種類がある場合があって、体内での性質が異なる」点が重要です。

これは近々、まとめてリストを作ります。

 

論点① 天然由来と合成由来では何が違うのか

 

結論:同じ物質なら、特に違いはありません。

天然であれ合成であれ、全く同じです。

例えばビタミンB1であれば、天然でも合成でも「C12H17N4OS+」という化学式で表される物質であることに変わりありません。

製法がどうであろうと、全く同じ物質ですから体内での作用も同じです。

 

同じ栄養素でも、天然と合成で違う物質になる場合は、比較検討する必要がある。

前提知識②で挙げた葉酸のような場合ですね。天然の場合と合成の場合で物質が異なるので、比較検討する必要があります。

ちなみに葉酸の場合は、天然よりも合成の方が体内での吸収が良いです。

また、前提知識②で挙げた鉄分が「ヘム鉄」と「非ヘム鉄」に分かれているように、天然由来でも複数の種類がある、なんて場合もあります。


天然か合成かに関わらず、同じ栄養素でも種類が複数ある場合には、そのうちのどれを摂るべきか比較検討するのが良いでしょう。

 

 

最後に

 

ここまでが、「天然原料と合成原料は、どう違うのか」というお話でした。

答えは、「同じ場合もあるし、異なる場合もある。異なる場合は、どちらを摂るべきか検討しましょう」です。

 

今度の記事では、サプリメントの話をします。

栄養素をサプリメントとして加工する際には、また色々な問題や議論が出てきますので、出来るだけ分かりやすく解説いたします。

 

それでは、最後までお読み頂き、ありがとうございました。